こんなことがありました。
私は野球未経験ですが、プラスチック製のバットとゴムボールで野球をするのが子供の頃の遊びの定番で大好きでした。
娘がいるのですが、よく暇つぶしに野球に付き合ってもらったものです。初めは室内でキャッチボールやバッティングだったのですが、娘は不思議と嫌がりません。特にバッティングが大好きみたいでした。
そのうち嫁さんに「外でやれ」と言われるようになったので、外でもやるようになりました。
遊びでカーブを投げると娘も真似をしたがったりして、投げ方を教えると、
「おりゃ!」
とか言ってカーブを投げます。
娘は4歳くらいから空手をやっていて、初段です。
空手の試合の後、結果に少し落ち込んでいる娘を元気づけようと、私の姉夫婦が、
「なにか欲しいものない?」
と聞いてくれました。
「ミズノのグローブが欲しい」
と娘。
「え?なんで?」
笑いながらもミズノの高級グローブを買ってくれました。
そのグローブを持って、公園に行ってノックまでやるようになりました。
「フライってどうやって打つん?」
「女子がそれ聞く?」と思いながらも、
「ボールの真ん中より上を叩くとゴロ、下を叩くとフライになるよ」
と教えてたりしてました。
実際娘は良く打ちました。
そして肩が強い。
一緒に野球で遊ぶ他の女の子がいないので、比較したわけではありませんが、おそらく同年代の男子並みに遠投してたと思います。
事実、娘は学校のスポーツ測定でソフトボール投げは女子ではもちろん1位、男子と比べてもソフトボール、野球経験者以外には勝っていました。
小学校4年になると、学校が終わってせっせと宿題を済ませて公園に行くようになります。
キャップを被ってバットにグローブをぶっ刺して。
そう、カツオくんスタイル。
※イメージ
本当にこのスタイルで出かけていました。
公園に男子の集団が野球をやっているなかで、一人だけ女の子がいる。
「誰?」
そう思ってよく見たら「〇〇ちゃん(←娘)だった〜」
とわざわざ同級生のお母さんが笑いながら連絡をくれたこともありました。
あるとき、公園でいつものように野球をしていて娘が打席に入ったとき、新入りの同級生の男子に、
「こいつ女やけん、そんなに後ろで守らんでええよー。そこまで飛ばん。」
って言われたので、公園の端から端まで飛ばしてやったと言っていました。
そんな娘なのでバッティングセンターにもよく行ってました。
ある日の事。
娘がゲージに入って打っているのを夫婦で見ていたら、いつのまにかご老人が娘のバッティングをジーッと見ていることに気が付きました。
「女の子がバッティングセンターで打っているのが珍しいんだろう。」
と、特に気にもしていませんでした。
そしたらご老人が嫁さんに、
「娘さん?」
と話しかけてきました。
「そうです。」
嫁さんが返すと、
「どこかで野球を習わせてるんですか?」
「いいえ、ただの遊びでたまにこうやって打つくらい。後は公園で男子に混ざって野球をやってるくらいです。」
「この子は良く打つね〜。うちのチームならすぐ4番を打てるよ。私は〇〇(←地名)で野球チームの指導者をやってるんですが、今日は休みなので名刺を持ってきてない。とても残念です。〇〇(←チーム名)ってチームなので、興味があれば連絡ください。」
とスカウトっぽい事をされました。
夫婦で笑いながら半信半疑で調べてみたら、本当に実在するチームでした。
でも家からかなり遠いので入団は見送りました。
そんな娘なので、プロ野球に興味を持つのも必然です。
あるとき、近所の焼き鳥屋さんに親子3人で立ち寄った日の事。
そこは地元球団のファンの方がよく来る店みたいで、その日も我々3人が座るカウンターの隣にファンであろう年配の夫婦がおられました。
店長も熱狂的なファンの方だったので、自然と娘と話が合います。その店長と娘の会話を笑いながら聞いていたお隣の御夫婦が、
「〇〇(←球団名)で誰が好きなん?」
と参戦してきました。
娘は、
「中崎」
と即答。
「え?なんで中崎(笑)?」
「顔が格好いい」
「この娘は世の中の男子に希望を与えるね〜(笑)」
と全員で笑いました。
そんな娘も高校生になりました。そして念願だった野球部のマネージャーになりました。
あっという間に日焼けで真っ黒になりながら頑張っています。
なぜが部員にノックも打っているらしいです。
「全国レベルを見ておきたい」という娘のために、研修という目的で今年も夏の甲子園球場にいってきました。
フォトグラフ / EXILE ATSUSHI feat.東京スカパラダイスオーケストラ ホーンセクション
2023年熱闘甲子園のテーマ曲です。高校野球好きな娘の影響で知りました。ATSUSHIさんのすこしハスキーな声とトランペットが高校野球の映像にとても良く合います。
負けてしまった人を称える曲です。だから良い。
憧れの舞台での一瞬の輝きを夢見て、その一瞬のために途方もない時間を努力に費やしてきた。
それでも叶わなかった儚さと美しさがとてもストレートに表現されています。
何歳になっても野球好き、そしてこういう曲に心打たれる人であってほしいと娘に願います。
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