夜釣り

こんなことがありました。
私はいわゆる霊感はないのですが、一度怖い体験をしたので書きます。

夜釣りをしていました。

その場所は小規模な堤防で、常夜灯が一本あるのですが、照明は点いていませんでした。
辺りは真っ暗です。
その堤防の近くに公園がありました。ジャングルジムとブランコぐらいしか遊具がない小さな公園です。そこには照明が点いていました。

魚からの反応は全くなく集中力が切れたせいか、なんとなくその公園に目を向けたときです。
黒い服を着た女の子が1人でブランコを漕いでいました。
時刻は深夜0時を過ぎていました。

おかしい。

でも、その時の私は霊的な印象ではなく、

「あの女の子、こんな時間に1人で公園に来て、あの子の親は心配せんのかね?
まったく近頃の親は」

と、心配というか、その子に同情するような感情でした。

特に気にもせずに釣りを続けていました。

いつの間にか女の子はもういませんでした。

すると嫁さんから着信が。

「もしもし、釣れた?」

「全く釣れん。」

なんとなく、さっきの女の子のことを報告してみました。

「さっきさ、近くの公園に黒い服着た女の子がブランコ漕いでた。あの子の親は心配せんのかね?」

すると奥さんが、

「・・・。あんた、それ見たんやない?」

「え?」

「とにかく変なもの一緒に連れて帰ってこんどってよ。プツっ!」

「・・・。」



無音となった携帯が急に不安を連れてきました。

公園は不必要な明るさでそこにあります。

ブランコがかすかに揺れている。



「あんた見たんやない?」

嫁さんの言葉がフラッシュバックしてきました。

もう釣りに全然集中できない。

冷静に考えれば確かにおかしい。

辺りは真っ暗。

私まで一緒に溶けてしまいそうな闇。



撤収です。かなり乱暴に釣り道具を車に放り込んで、一目散に走り出しました。






帰りの車内。

いるんです。

明らかに背後に気配を感じる。

誰かいる。

でも怖くてルームミラーで確かめる気になれない。
絶対にミラーが視界に入らないように前傾姿勢で運転しました。

気配は強くなる一方です。

かなり慌てて運転してたので、赤信号に気がつくのが遅れて強めのブレーキで止まったときです。

左肩を誰かに掴まれました。

「うおっ」

こういう時、ホラー映画みたく、「ぎゃー」ではないんですね。

人間は予測してない恐怖に対して、

「うおっ」

でした。

完全にパニックです。祈るような、か細い声で、

「ごめんなさい、俺についてきても何もしてあげられない、ごめんなさいごめんなさい・・・」

そう言いながら恐る恐る左肩を見ると、



釣り竿でした。

「え?あ、竿?」

それ以降、気配は全く感じなくなりました。

人間、ここまで思い込みの度が過ぎると病気です。

[オマケ] 勝手に未来へ伝える名曲


北風〜君にとどきますように〜 / 槇原敬之

槇原敬之さんの「北風」を槇原さん自身がアレンジした作品です。
親友の重(しげ)に教えてもらって聴き始めました。
重を思い出す曲です。

オリジナルより、断然この「北風〜君にとどきますように〜」が良いです。
冬の訪れを告げる曲なのにとても温かな気持ちになる作品です。

こういう事を言うと怒られるかもしれませんが、私は槙原さんが逮捕されるまでの作品が大好きでした。
アルバム「太陽」までは今でも聴いています。

恋と友情を英語のフレーズを使わず、日本語で表現する天才でした。