こんなことがありました。
今から20年ほど前、私はブラックバスフィッシングにハマっていました。休日は夢の大型魚を求めて、野池、ダム、川を渡り歩いていました。
バス釣りに限らす全ての釣りに言えることなのですが、誰も居ない場所、誰も居ない時間に釣りをするのが魚に出会う鉄則です。なので夏なんかは早朝に出かけることとなります。
真夏でした。その日は地元のダムに行こうと前々からから決めていました。朝 5時前にはポイントに入りたい。ってことは家を4時過ぎには出ることになります。
実は家にいる時からすでに身体の異変には気が付いていました。
「腹が痛い・・・」
でもトイレに行くと出発が遅れてしまいます。ってことは他の釣り人に先にポイントを取られる可能性が出てきます。なので自分に言い聞かせます。
「大丈夫、着く頃には治っている。」
家を出ました。が、やっぱり腹が痛い。でも早く釣りをしてデカい魚を釣りたいんです。お腹が痛いくらい我慢しなきゃ。
予定通り 5時前には釣りを始めました。でも明らかにお腹がさっきより痛い。気を抜くと汁が漏れ出すレベル。
「どうしよ。トイレに行くべきか。いや、これむり。」
正直あまりの腹痛に釣りどころじゃなくなっていました。
「確か、ダムの入り口の横の広場にトイレがある。車で 5分くらい。」
愛車フォレスターを走らせました。ところがです。
トイレが故障中で使用禁止となってます。ってかロープとかチェーンで完全に封鎖されてます。
「どうする・・・?」
ダムを降りればコンビニがあります。でも車で20分程かかります。私の門はおそらく5分で決壊。
決断です。
ダムのトイレは芝生の広場の一角にありました。田舎のダムです。山奥です。平日です。早朝です。多分誰も来ません。
「ここでしよ。」
いやダメですよ、そんなことは絶対に。でもその時の私には選択の余地はありません。車にはティッシュもあります。
一応芝生広場の中でも人目を避けられる場所を選びました。始めてから気が付いたのですが、そこ、「ペットの糞は持ち帰ってください。」という趣旨の看板がありました。
こんな感じの看板です。
いや、見えなかったんです。見てたら始めてないですよ、もちろん。
でも出始めたものは引っ込みません。止められません。BREAK THROUGH!
「ふー」
危機は脱しました。安心。でもすごい罪悪感。
もちろん、モロに見えない様に上からティッシュを掛けてあげました。
子供に布団をかけてあげるように。
そして誰かにってわけではないですが、
「ごめんなさい。」
と何度も謝りながらその場を引き上げ、釣りに戻りました。
それから2週間後の休日。再びそのダムに釣りに出かけました。私は大卒ですので学習能力があります。ポイントに行く途中、「あのトイレは使えるのか?そしてあの場所は?」
その二つを確認するために例の芝生広場に寄ってみました。
トイレはまだ使用禁止。そしてあの看板の場所に。
犯人は現場に戻るってのは本当なんですね。
看板の場所を確認すると流石に私の“もの”は跡形もなく消えていました。
「どなたか知りませんが、本当にすみませんでした。ありがとう。」
そう呟きながらその場を立ち去ろうとした時、ふと看板が目に入りました。
何か違う。
「ペットのフンは持ち帰りましょう」が、
「ペットのフンは持ち帰りましょう。人のも!!」
と書き直されてました。油性マジックで手書きでした。
本当にごめんなさい。
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